あらすじ

魔王軍四天王、《氷血の魔女》ゼナ・クロウ。 戦況を数手先まで読み、最小限の犠牲で勝利を重ねる天才軍師。 人類から恐れられ、部下から慕われ、魔王からは次代を担う逸材として期待されている。 ――だが本人の願いは、世界征服でも出世でもない。 昼まで寝たい。 温かい飲み物を飲みたい。 毛布にくるまりたい。 何より、予定のない休日がほしい。 仕事を早く終わらせるため効率化すれば成果が出る。 成果を出せば評価される。 評価されれば、もっと仕事が増える。 とうとう最後の休日まで潰されたゼナは決意した。 「……魔王軍、辞めよう」 しかし四天王は軍事機密を知りすぎているため、自主退職禁止。 唯一の抜け道は、重大な失態を犯して四天王を解任されること。 ならば、わざと失敗すればいい。 ――ただしゼナは、雑な失敗ができなかった。 部下を死なせたくない。 民間人を巻き込みたくない。 後始末を誰かへ押しつけるのも性に合わない。 そこでゼナが目指すのは、 「誰も傷つかず、取り返しもつくのに、規則上は立派な失態」。 人間の村から食料を奪えと言われれば、逆に食料を渡す。 維持費ばかりかかる重要拠点は、死者ゼロで勇者へ明け渡す。 ところが、誰も困らないほど完成度の高い失敗は、 別の角度から見ると大抵の場合、優秀な改善策だった。 ゼナがクビになろうとするほど、 人類は救われ、魔王軍は強くなり、本人の評価だけが上がっていく。 しかもゼナの事情を知った人類側の勇者リリアまで、 「あなたが四天王でいてくれた方が、人類が死なない」 と、敵なのにゼナの退職工作を潰し始める。 辞めたい四天王。 辞めさせたくない勇者。 世界を救う気なんてない。 正義のためでもない。 ゼナはただ、静かに仕事を辞めたいだけ。 その小さな願いが、長く続いた人類と魔族の戦争を、 本人の望まない方向へ少しずつ変えていく。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2026/08/22
  • 現在の作品魔王軍をクビになりたい四天王、敵の勇者が辞めさせてくれない