あらすじ
安全にうるさい養護教諭・アンナには、誰にも言えない過去がある。
中学校の保健室には、不登校を続けるナオや、性別に違和感を抱えるヒカルなど、それぞれに悩みを抱えた生徒たちが集まってくる。
アンナは、生徒の気持ちには誰よりも寄り添う一方で、「安全」に関してだけは決して譲らない。
雷が近づくグラウンド。
猛暑の中のプール授業。
「これくらい大丈夫」
「他の学校もやっている」
そう言う教師たちに、アンナは何度でも立ちはだかる。
「危険です。やめましょう」
なぜ、そこまで安全にこだわるのか。
その理由は、平成の初め、大学生だった頃にある。
ヨット部に入部したアンナは、厳しい練習の日々の中で、主将の航平先輩に惹かれていく。
「インカレで勝つ」
そう笑う先輩と過ごす時間は、親の顔色ばかりうかがってきたアンナに、自分の人生を生きる喜びを教えてくれた。
しかし、大学二年の春。
穏やかだった海が突然牙をむく。
次々と転覆するヨット。
途切れる無線。
荒れ狂う風と波。
海に投げ出されたアンナと航平先輩は、互いの手だけを頼りに流されていく――。
あの日、海で何が起きたのか。
そして、その経験はアンナをどう変えたのか。
過去を抱えて生きる養護教諭と、保健室に集う子どもたち。
「これくらい大丈夫」が、誰かの人生最後の日になるかもしれない。
だから今日も、アンナは言う。
「危険です。やめましょう」
これは、命を守ることに誰よりも真剣な一人の先生と、生きづらさを抱えた子どもたちの再生の物語。