あらすじ
家族を奪った敵将を、私は愛してしまった。
朔国東部 東州の名家・沈家に生まれた沈瑶月は、辺境で戦う将軍の父と三人の兄に愛され、何不自由なく育った十三歳の少女。
王太子・蕭長淵の妃候補として高等な教育を受ける一方、戦場へ赴く家族の役に立ちたいと医術を学んでいた。
――あの日までは。
永平十六年。
東州と沈家を襲った謎の惨劇。
家族を失い、傷だらけの姿で都へ送られた瑶月は、四年後、長淵の軍に従軍する軍医となっていた。
戦場で人の命を救いながら、瑶月の胸には一つの疑念が生まれる。
あの日、沈家を襲ったのは本当に山賊だったのか。
そして、自分たちを滅ぼしたとされる景国の若き将軍――劉晟は、本当に冷酷非道な男なのか。
永平二十年、戦場で二人は出会う。
敵将と、敵国の軍医として。
やがて瑶月は、復讐のために近づいたその男の中に、誰にも知られていない優しさと傷を見つけていく。
けれど、憎しみを捨てることはできない。
真実を知るほどに、愛してはいけない人を愛してしまう。
三国を巡る陰謀。
失われた一族。
「北幻珠」と呼ばれる幻の存在。
そして、十六年前から密かに動き続けていた運命。
これは――
家族、故郷の民を奪われた少女が、復讐と真実、そして愛の間で揺れながら、自らの運命を切り拓いていく物語。