あらすじ
高校二年生・灰島燈(はいじま・とも)は、他人が72時間以内にやらかす後悔の匂いだけを嗅ぎ分けられる。浮気の匂いは腐った蜜柑色、万引きは錆びた鉄の匂い、自死の匂いは――澄みきった、真夏のプールの塩素。
匂いを消すには、当人が「その行動をしないこと」を選ぶしかない。けれど人はたいてい、後悔するとわかっていても止まれない。
ある朝、燈は通学電車で、隣に立つ見知らぬ女子高生から見たことのない色の匂いを嗅いでしまう。透明で、けれど鋭利な、真新しい刃物のような匂い。それは彼女がまだカテゴリ分けできていない後悔――つまり、この世でまだ誰も犯したことのない種類の後悔だった。
72時間。燈のタイムリミットが始まる。