あらすじ
七瀬心春には、誰にも言えない秘密がある。
「感情遅延症候群」——出来事に対する自覚的な感情だけが、正確に三日後に遅れて届くという、極めて稀な体質だ。だから心春は、いつも自分の心に一番遅れて気づく。楽しいはずの日に涙が止まらず、悲しいはずの日に、なぜか笑ってしまう。三日前の自分が受け取り損ねた感情を、今日の自分が代わりに引き受ける——そんな奇妙な生を、心春は静かに飼い慣らしてきた。
けれどある朝、抑えきれないほどの想いが、前触れもなく胸に押し寄せる。「三日前ノート」を開いて、心春は知る。三日前、幼なじみの神代蒼に告白され、自分はそれに「わからない」とだけ答えて、彼を深く傷つけていたことを。
今ならわかる。心春はずっと、蒼のことが好きだった。
けれど蒼はもう、心春に振られたものとして、そっと距離を置き始めていて——。
三日遅れの本心は、もう終わってしまった恋に、間に合うのだろうか。
これは、「今」を生きられない少女が、自分の心に追いつくための物語。