あらすじ
「彼女を妻に迎えたい」
冷酷公爵アーヴィンが、そう打ち明けた相手は人間ではなかった。
伯爵令嬢リディアの飼い猫、ノアールである。
『なら本人に言え』
「まずは贈り物をするべきだと?」
『魚を出せ』
猫の言葉が分からない公爵と、魚が欲しいだけの猫。
二人の会話はまったく成立していない。
けれど、動物の言葉が分かるリディアには、すべて聞こえていた。
そして公爵が恋している相手は、どう考えてもリディア自身である。
普段は目すら合わせてくれないくせに、猫の仕草を恋愛指南だと思い込んだ公爵は、巨大な魚を贈り、長椅子で距離を詰め、自分と同じ香水を贈ってくる。
そのたびに期待してしまうのに、彼が口にするのは「信頼できる相手からの助言だ」という言葉だけ。
猫には言えるのに、どうして私には言えないの?
リディアが屋敷を去るまで、あと三日。
両想いなのに本人の言葉だけが足りない、冷酷公爵と令嬢と一匹の、もどかしくて少しおかしな恋の話。