あらすじ
前世で「要領が悪い」「気が利かない」「役立たず」と言われ続けた男は、ある日、異世界へ転生した。
神様からチート能力をもらったわけでもない。
特別な才能があるわけでもない。
ただ一つだけ、前世の記憶を持ったまま、新しい人生を始めた。
――そして気づいた。
この世界には、前世の自分を知る人間が誰もいない。
ならば今度こそ、誰にも迷惑をかけず、目立たず、静かに生きていこう。
そう決めたはずだった。
ところが。
「この倉庫を整理してくれ」
「君、計算を手伝ってくれないか?」
「……このガラスが割れた原因、風じゃないですか?」
本人はただ、失敗しないように必死になっているだけ。
けれど周囲から見れば――
慎重で、丁寧で、観察力があり、誰も気づかない問題を見つけ出す少年だった。
「俺は無能なんです!」
「……お前、本気で言ってるのか?」
世界は俺をリセットした。
なのに、俺だけが昔の俺を知っている。
これは、過去に貼られた「自分」というラベルを抱えたまま異世界へ来てしまった男が、少しずつ「今の自分」を見つけていく物語。