あらすじ
雪の夜、十歳のリディアは、鎖をつけた見知らぬ少年を温室で見つける。
「優しくされるために、役に立つ必要はないの」
少年はその言葉に救われるが、彼女を危険に巻き込まないため、別れも告げず王宮へ戻っていった。
それから十二年。
かつての少年は、王国最強の魔術師カイル・ヴァレンティア大公となっていた。誰もが振り返る美貌で、国王さえ一目置く優秀さを併せ持つ大公。しかし彼は、たった三か月を共にしたリディアを一日も忘れず、十二年間ただ一人を捜し続けていた。
ようやくリディアを見つけたカイルは、彼女を大公邸へ迎え入れる。
他人には容赦ない彼も、リディアにだけはどこまでも甘い。離れていた十五年を取り戻すようにそばへいたがり、髪へ触れ、膝へ頭を預け、二人きりになると素直に甘える。
カイルの深い執着を、孤独だった少年が恩人へ向ける感謝だと思ったリディアは、彼と隣国王女との婚姻話を知り、自ら姿を消す。
「君のいない人生に幸福を感じることはない」
十二年間、ただ一人だけを愛し続けた最強魔術師と、深く愛された令嬢。
これは、あまりに重い初恋を抱えた男の物語。