あらすじ
「老後のために」――そう自分に言い聞かせ、若い頃の私はあらゆる娯楽を我慢し、必死に働き続けてきた。汗と涙の結晶として、銀行口座に積み上がったのは大金・三千万円。これでようやく、誰にも遠慮しない優雅な余生が送れる。そう確信した瞬間、私の肉体は限界を迎えていた。悲鳴をあげて動かない股関節。旅行に行くことも、美味しいものを買いに行くことすらままならない。通帳の数字は増えても、私の世界はベッドの上に縮んでいく。「あの時、もっと無理をせず、その瞬間を楽しんでおけばよかった――」過去の自分への激しい後悔と、あまりにも皮肉な豊かさ。お金とは、人生とは何かをユーモアと哀愁を交えて問いかける、全世代の心に刺さるビターハッピーな短編文学。