あらすじ
「天秤は傾いた。君のその『奇跡(ルール)』、破綻しているよ」
世に溢れる『呪具』や『オカルト遺品』。
人間の悪意と結びつき、奇怪な不可能犯罪を引き起こすそれらを、警察は解明できない。
オカルト遺品専門の鑑定事務所を構える男・秤谷 契(はかりや けい)。
彼には超常の霊力も、怪異を打ち倒す異能も一切ない――正真正銘の「無能力者」だ。
しかし彼は、死者の最期を視る半妖の助手・つづらと共に、数々の怪死事件を嗤いながら解決していく。
彼にとってオカルトとは恐怖の対象ではなく、厳密な発動条件と代償によって縛られた「ただの物理法則の追加」にすぎないからだ。
完全遮光の密室で心臓を貫かれた資産家。
現場に残された「影を刺して人を殺す呪具」と、死者が最期に見た「存在しない満月」――。
不可解な怪異の裏に潜む、人間の論理的トリックを見破ったとき、無能探偵の冷徹な計算式が犯人を詰ませる!
【本格ミステリ×オカルト異能頭脳戦】
※呪具のルールと現場の証拠はすべて作中で開示されます。犯人とトリックを推理しながらお楽しみください。
【登場人物紹介】
【秤谷鑑定事務所】
◆秤谷 契(はかりや・けい)
<肩書>
秤谷鑑定事務所 所長
<異能>
なし(完全な無能力者・一般人)
<人物>
常に冷静沈着で、皮肉と毒舌が絶えない現実主義者(リアリスト)。
怪異や呪いを恐怖せず「未解明の物理法則の追加」と定義する。
本人はあくまで「鑑定士」を名乗っているが、その“界隈”では、腕利きの「探偵」として知られている。
異能がない代わりに、呪具の「発動条件」「射程」「代償」というルールの穴を突き、現場の物理証拠と冷徹な計算で犯人を追い詰める。
「その呪い、物理法則の追加にすぎない」
◆幽木 綴(かすかぎ・つづる / 通称:つづら)
<肩書>
事務所の居候兼・助手
<異能>
【残影再現(ざんえいさいげん)】:遺体から「死者が最期に見た3秒間の視界」を空中に投影する。
【冷気干渉】:微弱な黄泉の冷気を操り、局所的に気温を下げる。
【嗅覚】:半妖で在るが故、人ならざる嗅覚の持ち主。
<人物>
見た目は十代半ばの華奢な少女。無口・無表情で小動物のように感情を表に出さない。
死者の思念は「苦い」ため、口直しの甘味(特にみたらし団子や黒糖飴・和スイーツ物)に強い執着を示す。
彼女の能力で視る景色は100%死者の主観(錯覚・勘違い・変装もそのまま映る)であるため、真相の解明は契の論理に委ねられている。
🏰 【File.1:朽葉家(事件関係者)】
◆ 被害者:朽葉 弦蔵(くちば げんぞう / 72歳)
立場:朽葉家当主・強欲なオカルト骨董コレクター
状況:
完全遮光・施錠された密室(書斎)で、心臓を黒い杭で抉られて変死。
最期の3秒間に「天窓から差し込む満月」を見上げていた。
◆ 容疑者①:朽葉 宗一(くちば そういち / 45歳)
立場:長男・会社経営者
動機:多額の借金肩代わりを父に拒絶され、事件直前に激しく口論していた。
特徴:神経質でオカルトをガラクタと見下す。停電時に自室へ懐中電灯を取りに行き、単独行動の空白時間がある。
◆ 容疑者②:朽葉 焦子(くちば しょうこ / 40歳)
立場:長女・父の身の回りの世話役
動機:表面上は従順だが、母を見殺しにした父へ深い憎悪を秘めている。
特徴:喪服のような黒いドレスを着た神経質な女性。停電時に「配電盤を見に行く」と席を外していた。
◆ 容疑者③:神保 雅之(じんぼ まさゆき / 60歳)
立場:朽葉家に長年仕える老執事
特徴:屋敷の構造を知り尽くした忠実な使用人。事件当時、宗一や焦子と同じサロンにいたが、停電後の行動に曖昧な点がある。