あらすじ

所得代替率、四三・七パーセント。  厚生労働省年金局の数理職・真木健吾は、五年に一度の財政検証で、この国が四十年間隠し続けてきた数字にたどり着いた。「百年安心」は、とうに嘘になっていた。  二〇三三年、日本の年金は静かに死んだ。  国が出した答えは、前代未聞のものだった。政府を通さず、日本銀行から国民一人ひとりの財布へ、毎月十万円を直接届ける。ただしそのお金は、使わなければ一年で半分に溶ける。デジタル・ベーシックインカム。  猛反発する富裕層。熱狂する若者。ためらう貧困層。徴税権を手放すまいとする財務省。そして食卓では、「四十四年払ったんだ、もらって当然だ」と怒鳴る父と、「じゃあ私たちの分は誰が払うの」と問う娘が、真木を挟んで睨み合う。  お金とは、何なのか。  年金は、本当に「払ったからもらえる」権利なのか。  左遷された先の倉庫で、真木は封印された一冊の報告書を見つける。昭和六十年三月。四十九年前に、この制度のすべてを予言していた紙。その最後のページで、執筆者の名前だけが黒く塗り潰されていた。  国会が動く。数字が動く。金が動く。  そして真木は、予算委員会の証言台で、この制度の「本当の名前」を口にする。  書き下ろし長編・全十六話。 ※作中に高齢者の死、特殊詐欺、家庭内の金銭トラブルの描写がありますが、いずれも一般文芸の範囲です。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2026/08/21
  • 現在の作品年金と溶ける金