あらすじ

素肌で触れれば、相手の魔力を奪ってしまう。 その力を処刑のために利用され、「管理対象」として地下施設に囚われていたレティシアは、施設が崩壊した夜、生まれて初めて命令に背き、吹雪の森へ逃げ出した。 雪の中で彼女を救ったのは、森でひとり暮らす大魔道士ノアだった。 彼は、生み出され続ける膨大な魔力によって、絶えない熱と痛みに苦しんでいた。 偶然、二人の手が触れたとき。 レティシアは彼の魔力を吸収し、ノアを長年苦しめていた熱と痛みが、一時だけ消えた。 しかしノアは、もう一度触れてほしいとは言わなかった。 「触らないで」と言えば、手を下ろす。 怖いと言えば、待つ。 代わりに彼が差し出したのは、温かな食事と、鍵の掛からない部屋と、答えを急かさない時間だった。 そうして始まった、深い森の小さな家での二人暮らし。 温かな食事。 紅茶と蜂蜜。 本を読む午後。 いつもの場所に並ぶ、二つのカップ。 命令のない日々の中で、レティシアは少しずつ、「自分がどうしたいのか」を知っていく。 そしていつしか、触れることを恐れていたはずの彼女の中に、初めての願いが生まれる。 ――「触れなくていい」と言ってくれたこの人に、自分から触れてみたい。 誰かを傷つけるために使われていた手で、大切な人へ触れたいと願い始めたレティシア。 しかし、地下へ置いてきたはずの過去もまた、少しずつ彼女のいる森へ近づいていた。 触れることも、離れることも、そばにいることも。 誰かに決められるのではなく、自分で選べるようになるまで。 二人がそれぞれの孤独を抱えたまま、同じ場所で生きることを選んでいく物語。

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カクヨム
カクヨム2026/08/21
  • 現在の作品雪灯りのレティシア ―触れることを恐れた少女が、ただひとりに手を伸ばすまで―