あらすじ
「貴様との婚約は破棄する!」
魔力測定は最下位、社交もできず、廃れた水車小屋に籠もるばかり――そんな理由で、王太子ジェラルドは大勢の前でフィオナに婚約破棄を突きつけた。義妹セレーヌに寄り添い、勝ち誇る彼の姿に、令嬢たちの嘲笑が重なる。
けれど、フィオナは泣かなかった。喚かなかった。
前世で文化財修復技師だった彼女は、知っていたのだ。自分が十年間ひとりで手入れしてきた『第七水車小屋』こそ、建国の始祖が最初に建てた『始原の水車』――この国の魔力を回す“心臓”だということを。
「かしこまりました。管理権も、そちらへお返しいたしますわね」
無能と嗤われたまま、フィオナは唯一の味方である侍女マレナと共に、辺境へと旅立つ。
一方、王都では義妹セレーヌが水車の魔力を王都へ一括集約する制度を発表。古い水車は次々と停止され――やがて土地は枯れ、結界は薄れ、魔物が溢れ出す。
忘れられた水車を、忘れられた子守歌で。フィオナの手が、眠れる国宝級の精霊を、ひとつ、またひとつと目覚めさせていく。氷の騎士団長オルウェンや小さな精霊との出会いに支えられながら、彼女は誰にも知られなかった“地味な仕事”の価値を、世界に示していく。
無能と嘲笑った婚約者が泣き喚いても、もう遅い。
捨てられた令嬢の、静かで痛快な逆転譚が、今はじまる。