あらすじ

鵜坂町は坂ばかりの小さな町で野良猫が異常に多い。 町で鍵屋をやっている都筑灯は春先からなんとなく猫を数えていて、あることに気づく。この町の猫は月曜日に増える。火曜日にも水曜日にも増えない。月曜日にだけ、必ず一匹。 増えた猫は細い革の首輪をしている。首輪の輪には針金で何かが結わえてある。 古い腕時計。昭和六十三年の学生証。片方だけの赤い毛糸の手袋。赤ん坊の靴。 どれもこの町で死んだ人の持ち物だった。しかもその人が「また使うつもりでいた物」ばかりだった。修理に出したまま取りに行かなかった時計。明日も定期入れに入れておくはずだった学生証。 首輪の物は持ち主が誰かわかる人間にしか外せない。誰も引き取らなければ、猫はそれを提げたまま生きて死ぬ。 そして九月の終わりの月曜日、灯の店の前に灰色の猫が座っていた。 首輪に下がっていたのは、灯がいま使っているのと同じ、この家の勝手口の鍵だった。柄尻には、灯自身が打った刻印があった。 ――規則によれば、その物の持ち主は、もう死んでいる。 全十二話

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カクヨム
カクヨム2026/08/21
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