あらすじ

七年間、わたしは夫の論文を書いてきた。深夜のキッチンで、風呂場の脱衣所で、 実験ノートの余白で。 四十三本。すべて夫・宗一郎の名で世に出て、彼は三十四歳で准教授になった。 「君の名前は載せられない。共著にしたら僕の実績が薄まる」 そう言った夫が、教え子との再婚を告げてきた夜、わたしは静かに離婚届を出した。 半年後、宗一郎は国際医学賞の最終選考に残る。 だが授賞式の壇上で、若手審査員の男が一枚の紙を掲げた。 「この四十三本、謝辞の一文字目を順に読んでください」。 そこに浮かんだのは、七年間ずっと隠されていた、わたしの名前だった。

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カクヨム
カクヨム2026/08/21
  • 現在の作品『君の名前は載せられない』——四十三本の謝辞に隠した名前に、まだ気づいていない