あらすじ
「へー」「うん」「ヤバい」「それな」
水無月玲矢(みなづき れいや)の口から出る言葉は、10文字を超えることがない。
顔も良くて運動神経も抜群だが、圧倒的に頭が悪く、語彙力はゼロだった。
そんな玲矢の隣の席になったのは、幼い頃に視力を失った少女、文月香菜(ふみづき かな)。
美しい春の景色を前にしても「ヤバいくらい晴れてる」としか伝えられない己の不甲斐なさを感じた玲矢は、彼女に世界を教えるため、人が変わったように言葉を極め始める。
「日向ぼっこしてる犬や猫みたいに眠くなる感じの空だ」
ひたすらに観察眼を研ぎ澄まし、不器用ながらも美しい景色を伝える玲矢。
しかし、彼は気づいていなかった。
香菜のためだけに極めたその『誠実な観察眼』と『的確な語彙力』が、日常会話の中で無自覚に周囲の女子たちを魅了し、絶大な支持を集めてしまっていることに。
他の女子たちに向けられる玲矢の優しい言葉に、密かにヤキモチを焼いてしまう香菜。
見えないすれ違いが生まれる中、香菜を心無い言葉で傷つける悪意が現れて――。
「てめえの安っぽい言葉で、こいつの世界を汚すな」
これは、語彙力0だったアホな主人公が、たった一人の愛しい少女のために言葉を極め、完璧な告白を受けるまでの、不器用で純粋な恋の物語。