あらすじ
王立学園に転入してきた小柄な少女、ベルタ・グランバルク。
清楚で、物腰が柔らかく、誰にでも丁寧な敬語を使う。
ただし夜は、地下闘技場にいる。
治療係として。折れた腕も、砕けた肋も、彼女は必ず治す。
――逆水平チョップで。
ある夜、そこへ二〇一センチの公爵令嬢が降りてくる。
ゴルディアーナ・ヴァン・ベルクヴァルト。
「あなた、強いでしょう」
その一戦は、十秒で終わった。
そして学期末の夜会。第三王子が婚約者を断罪する茶番の只中へ、ベルタが歩み出る。丁寧に、事務的に、罪状の日付を尋ねながら。
決闘の手袋が落ち、彼女が指を鳴らした瞬間――
大広間に、リングが出現する。
誰も呼んでいないリングアナウンサーが立ち、どこからともなく実況の声が響き、白黒のシャツを着たレフェリーが、いつの間にかそこにいる。
貴族の断罪劇は、こうして興行になる。
■ 企画概要
【ジャンル】異世界ファンタジー × プロレス
【コンセプト】
断罪ものの導線から入り、プロレス興行へ裏切る。
「聖女」と「悪役〈ヒール〉」という一見矛盾する二つの属性を、プロレスの文脈で接続します。
【主人公】
ベルタ・グランバルク/一五二センチ・一二三パウンド。
修道服風の制服の下は、彫刻のような筋肉。
相手の質量と勢いを利用して倒す技術型で、自分の腕力では投げません。
礼儀正しく、金勘定に厳しく、痛みで表情を変えない。
リングネームは "慈悲深き処刑人"。技名はすべて処刑に由来します。
【もう一人】
ゴルディアーナ・ヴァン・ベルクヴァルト/二〇一センチ・二五六パウンド。
公爵令嬢。完璧な礼儀作法と規格外の体躯。強い者に目がない。
第一話でベルタに敗れ、以降は勝手にセコンドとして付き従います。
本巻では一度も試合をしません。彼女がリングに上がるのは次巻からです。
【全五話の構成】
第一話 二人の異常者が出会う(地下闘技場・十秒の決着)
第二話 リングという舞台が成立する(断罪劇 → リング召喚 → 両者入場)
第三話 ベルタという選手が成立する(試合前半・王子が押す)
第四話 聖女の異常性が露出する(治癒の光が濁っていく)
第五話 試合のルールそのものが崩壊する(決着 → マイク → 挑戦)
【本巻で明かさないもの】
ベルタが何者なのか。リングとは何なのか。なぜ彼女だけが敷けるのか。
これらは一切説明しません。読者に分かるのは「彼女がやった」ことだけです。
【本巻の着地と、その先】
最終話でベルタは勝ち、ブーイングの中でマイクを取り、こう言います。
「いつ何時、誰の挑戦でも受けます」
誰も指名しない。門を開けただけ。
その門から最初に入ってくるのが、第一話で十秒で敗れた二〇一センチです。
次巻は、この再戦から始まります。
【演出方針】
実況・解説・レフェリー・リングアナウンサーは、いつどこから現れたのか誰にも分かりません。作中の人間も疑問を抱きません。
リングが起動すれば、それらは付随して発生する――という扱いです。