あらすじ
狂桜華~亡国の姫は、名を捨て帝を目指す~をカドコミ漫画原作コンテスト【ナツガタリ'26】用に手を加えたものです。
【作品紹介】
天和国――四大貴族と、二官八省によって治められる国。
皇女・咲宮桜桃は、父である星河帝のもと、侍女の六花と護衛の朝凪に囲まれ、宮廷で穏やかに暮らしていた。
だが、婚約者候補である京極宮昊夜との対面を翌日に控えた夜、宮廷を炎が包む。
後世に「八重御所の変」と呼ばれることになる謀反だった。
父を失い、名を失い、それまでの人生のすべてを奪われた桜桃。
死んだ皇女として歴史から消えた彼女は、やがて別人の名を借り、自らを滅ぼした宮廷へと戻っていく。
誰が父を殺したのか。
なぜ、あの夜に宮廷は崩れたのか。
そして、父が最期に遺した「この国を残せ」という言葉は、何を意味していたのか。
これは、すべてを失ったひとりの皇女が、己の名と国の未来を取り戻す和風ファンタジー。
【舞台設定】
天和(あまわのくに)
帝を頂点とし、四大貴族――青陽・朱明・白蔵・玄英が支える国。
朝廷では「二官八省」と呼ばれる律令制が敷かれ、政務を担う太政官と、祭祀や皇統を司る神祇官が並び立っている。
帝都の中心には「八重御所」があり、帝とその家族が暮らす。
「八重御所」から少し離れた場所に、皇族が暮らす御殿が立ち並ぶ皇居がある。
物語は、この八重御所を襲った謀反「八重御所の変」から始まる。
【四大貴族】
青陽・朱明・白蔵・玄英の四家。
古くから朝廷の中枢を担ってきた名門で、それぞれ羽州・武州・因州・備州を統治領としている。
四州はいずれも天和国を代表する発展州であり、四家は中央政界にも大きな影響力を持つ。
【衣装・意匠】
本作では、衣装や身につける意匠によって、人物の身分・所属・立場が視覚的に判別できる。
物語が進むにつれ、登場人物の立場が変わるごとに、装いも変化していく。
■近衛
鳳凰の翼が桜を抱く鳳桜紋。
・将官
帝と皇族を守護する武官。
濃灰を基調とした丈の長い軍装を身につけ、腰には刀を佩く。
胸に鳳桜紋の刺繍。
立ち襟には桜を象った階級章があり、花の数によって階級を示す。第一話では、近衛中将である朝凪は二輪の桜をつけている。
軍装の下は、筒袖の袷着物に、帯代わりの白い布。
細身の袴を筒が長い軍靴の中に入れている。
・門兵
筒袖の袷着物に陣羽織。胸に桜の刺繍がある。
■朝廷軍
麒麟の爪が橘の茎を掴む橘麟(きりん)紋。
筒袖の袷着物に、羽織。動きやすい括袴を合わせる。
袴の裾は足首で絞り、足袋に納める。
■皇族
宮中では重ねた和装を基本とし、身分や儀式に応じて衣を改める。皇女である桜桃は、物語冒頭では淡い桜色を基調とした華やかな衣を身につけている。長い袖や裾、重ねた衣が、後に彼女が別の身分で生きることになった際の装いとの対比になる。
・神祇官
祭祀と皇統に関わる官。太政官の官吏とは異なる、白を基調とした装束を身につける。華やかな宮廷衣装とは対照的に、清浄さと神聖さを感じさせる意匠を基本とする。
・朝廷の官吏
二官八省に属する官吏は和装を基本とし、所属や官位に応じた装束を身につける。武官である近衛とは一目で区別できるよう、刀や軍装ではなく、長い袖や冠などを用いた文官らしい姿を基本とする。
・四大貴族
青陽・朱明・白蔵・玄英の四家は、宮廷では共通する礼装を用いながらも、家ごとに異なる色や紋、意匠を持ち、出自を視覚的にも判別できる。
・花と紋
花や紋は、物語上の象徴としても用いられる。桜桃を象徴するのは「桜」。
【登場人物】
・咲宮 桜桃(さきのみや ゆすら)
本作の主人公。十六歳。
星河帝の娘として八重御所で育った皇女。世間知らずなところはあるものの、人を身分や立場だけで判断せず、困っている者を放っておけない。
父の国である天和国を心から愛している。
婚約者候補・昊夜との初対面を翌日に控えた夜、「八重御所の変」に巻き込まれ、その運命を大きく変える。
・星河帝(せいがてい)
天和国の帝。桜桃の父。
穏やかな人柄で知られ、娘の桜桃からも深く慕われている。
桜桃に「この国をどう思う」と問いかけた翌夜、八重御所の変によって命を落とす。
最期に桜桃へ「この国を残せ」、日向へ「この国を繋げ」と言葉を遺す。
・朱明 六花(しゅめい りっか)
桜桃に仕える侍女であり、幼い頃から彼女の傍にいる女性。
穏やかで柔らかな物腰ながら、ときには桜桃をからかうこともある、姉のような存在。
朱明日向の娘。
桜桃、六花、朝凪の三人で過ごす時間は、桜桃にとって何より穏やかな日常だった。
・朝凪(あさなぎ)
桜桃の護衛を務める近衛中将。
寡黙で表情に乏しいが、桜桃には過保護なほど気を配っている。真顔のまま甘いことを口にするため、桜桃からは「冗談が不器用」と評される。
桜桃が昊夜と会うことにも、なぜか乗り気ではない。
八重御所の変が起きた夜には持ち場を離れており、桜桃は混乱の中で彼を探し求めることになる。
・朱明 日向(ひなた)
星河帝の側近で、六花の父。
「金烏」の異名を持つ近衛大将。
星河帝から最期に「この国を繋げ」と託され、八重御所の変では桜桃を逃がすため宮廷に残る。
桜桃が初めて皇女として命を下した際、誰よりも早く彼女の前に跪き、「御意」と応えた人物。
・青陽 清明(せいよう せいめい)
朝廷に仕える官吏。左大弁兼治部卿。
冷静沈着で規則と手続きを重んじる一方、それは国を安定して動かすためのものでもある。
謀反後の朝廷で、桜桃たちの運命に関わっていく。
・京極宮 昊夜(きょうごくのみや こうや)
皇族の青年で、桜桃の婚約者候補。
武勇に優れ、その名は桜桃も以前から聞かされていた。
八重御所の変がなければ、その翌日に桜桃と初めて顔を合わせるはずだった人物。
桜桃はまだ見ぬ彼について「優しい方だといい」と期待していたが、その約束の日が訪れることはなかった。