あらすじ
数値インフレ、戦闘力制限、限定ガチャ、課金装備――。
十二年続いたオンラインゲーム『エンドレルム・プロトコル』は、アップデートを重ねるたびに、かつての面白さを失っていった。
それでもゲームを辞められず、累計百八十万円以上を課金してきた孤独なプレイヤー・久瀬玲司。
最後の大型アップデートを迎えた夜、彼のもとに差出人不明のメールが届く。
――そのバージョンが攻略不可能なら、正しいバージョンを試してみないか?
次に目を覚ましたとき、玲司は『エンドレルム・プロトコル』の世界にレベル一で転移していた。
そこは、宝石刻印も、ペットも、職業覚醒も、神器も、機兵も存在しない、オリジナル版Ver.1.0の世界。
だが、玲司のステータス画面だけはVer.12.0のままだった。
未来の育成システムはすべて使用可能。
購入済みアイテムの所有権も残っている。
しかし、課金ショップには接続できず、残された有料通貨は有限。そして、この世界には復活も存在しない。
現地の鑑定術に映るのは、玲司の低い基礎能力だけ。
誰も知らない装備倍率、ジェム共鳴、ペットの絆、隠し職業、称号効果、最終ダメージ――十二バージョン分のシステムを重ねたとき、わずかな力は常識外れの一撃へと変わる。
ただし、未来の力を使うたび、世界の歴史もまた、本来とは違う方向へ更新されていく。
これは、数値と課金によって壊されたゲームを、唯一のプレイヤーが最初から攻略し直す物語。
そして、人をレアリティや性能でしか見られなかった男が、攻略情報には存在しない選択をするまでの物語である。