あらすじ
今から半世紀以上前。
とある大学で『天才』と呼ばれた理学科准教授は、研究室での不可解な事故に巻き込まれ、全てを失った。
男が目を覚ましたのは、見知らぬ狂気の森。
奇形な植物が蠢き、未知の生態系が支配し、理不尽なまでの力を持つ巨大な魔獣が跋扈する絶望の領域。
科学という名の常識が一切通用しないその地で、男は悟った。
『ここは、己のいた世界ではない』と。
それは、果てしない地獄の幕開けだった。
抗うことすら許されない圧倒的な怪物達から、無様に逃げ惑う日々。
泥水を啜り、獣の腐肉を貪り、内臓を焼き焦がすような飢えと渇きに耐え凌いだ。
人間に出会い、微かな希望と共に心を許せば、待っていたのは無残な裏切りと略奪。
冷たい刃に肉を裂かれ、理不尽な魔術の炎に焼かれ、男は幾度も幾度も、死の淵を彷徨った。
――この世界において、命の価値など道端の石ころに等しい。
痛みに狂い、絶望に呑まれかけながらも、男は生にしがみついた。
やがて男の瞳から温かな光は消え、冷徹な戦士へと変貌を遂げていく。
あれから、五十数年。
裏切りと殺戮に満ちたこの狂った世界を、男はただ己の科学知識と泥臭い実戦武術のみで生き抜いてきた。
情を捨て、今日も血と泥に塗れる彼の願いは、たった一つだけ。
『元の世界へ帰る事』
これは、理不尽な世界を科学と殺意で蹂躙する、一人の男の泥臭き戦いの物語。