あらすじ
西暦二〇七五年。
プリンストン大学の日本人数学者・高城朔は、ゼータ関数の非自明零点へ信号を送り、十七年前に自殺した恩師から返事を受け取る。
「証明するな。臨界線は、神へ通じている」
すべての非自明零点が並ぶとされる、実部二分の一の直線。
それは単なる数学上の線ではなかった。
重力、磁場、宇宙線――さらには因果律さえ無効化し、宇宙船を神の世界へ導くワープ航路《HOTLINE》だったのだ。
そして最初の零点から戻ってきた一枚の硬貨には、まだ訪れていない年――二〇七六年が刻まれていた。
その年、地球は爆発しない。
ただ、世界全体が「次の一秒」へ進めなくなる。
人類滅亡を回避するため、朔はJAXA航宙士・黒瀬澪と実験航宙船《虚舟》に乗り、零点から零点へ、宇宙そのものを乗り換える旅に出る。
だが歴史を調べるうち、死んだはずの独裁者たちと、不可解な失踪を遂げた天才数学者たちが、すでに同じ航路を通っていたことが判明する。
長い旅路の果て。
神の楽園で彼らを待っていたのは――半獣神となった独裁者たちによる、永遠の午後のお茶会だった。
リーマン予想を解いた褒美は、地球を救うことではない。
自分一人だけが、桃源郷で永遠に生きる権利だった。
数学的真理は、誰のものか。
未来を所有するのは、誰なのか。
そして次の零点に現れた自分は、本当に出発した自分なのか。
素数、死者からの通信、因果災害、多世界航法、神、そして歴史上の独裁者たち。
一つの直線が全宇宙を貫く、超異色宇宙冒険譚。