あらすじ
寝たきりで今夜が峠のはずの令嬢が、王宮の夜会で三曲も踊っていた。
しかも、その相手はエマの婚約者だった。
彼は同じ日の婚礼衣装の確認を欠席していた。
エマは六年間、何度も彼との約束を譲ってきた。
病弱な幼馴染を責める女にはなりたくない。
そう我慢するうち、自分の望みさえ分からなくなった。
医師の手配も、薬も、療養先も、整えたのはエマだった。
その記録には、令嬢の六年分の体調が残されている。
だが、診断と婚約者の言葉には奇妙なずれがあった。
彼女の病は、すべて嘘だったのか。
それとも、誰かが都合よく意味を変えたのか。
今夜が峠という言葉は、いったい誰のものだったのだろう。