あらすじ
世界は、突然訪れた氷河期によって崩壊した。
物流は途絶え、電気も水道も失われ、食料が減るにつれて人々は少しずつ理性を失っていく。神崎蓮もまた、そんな世界で一人の女を最後まで信じ、自分に残された僅かな食料さえ差し出した末に、裏切られ、殺された。
「もし来世があるなら、もう二度と人なんて信用しない」
そう思って死んだはずの蓮が目を覚ますと、そこは氷河期が始まる三十日前。しかも彼には、生き物以外なら何でも収納できる謎の空間能力が宿っていた。
容量不明、内部では時間すら経過しない。
食料も水も燃料も、大型設備も収納できるのなら、未来を知る蓮がやることは一つしかない。
――今度こそ、生き残る。
蓮は大量の物資を備蓄し、高級マンションの自室を外界から隔絶された要塞へと作り変える。
そして三十日後、再び世界は凍り始めた。
最初は誰もが、すぐに日常へ戻れると信じていた。しかし雪は止まらず、支援物資は減り、一日三食が二食、一食へと変わっていく。それでも終わりの見えない極寒だけが続き、やがて人々は他人が持つ物を羨み、それを奪うための理由さえ「正義」という言葉で作り始める。
そんな世界でも、蓮の部屋だけは暖かい。食料も水も酒もあり、生き延びるためのすべてが揃っている。
だが、一度この世界で死んだ蓮は知っている。
極限状態で最も恐ろしいものは、寒さでも飢えでもない。
――人間だ。
一度は人を信じて殺された男が、二度目の氷河期で何を守り、誰を信じ、何を切り捨てるのか。
これは、すべてを収納し、すべてを備えた男が、壊れていく世界を生き抜く物語。