あらすじ
「王立学院設立以来の優秀な落ちこぼれ」——そんな不名誉な二つ名を持つセラフィナ・アストレイン、二十三歳。魔法の名門に生まれながら十歳のある日を境に魔法が使えなくなり、今は魔法省の片隅、通称・昼寝部屋で、仕事をしているんだかいないんだか分からない癖の強い老魔法師三人に囲まれて研究職として働いている。魔力の流れや妖精の姿だけは人一倍「視える」のに、肝心の魔法は使えないという、なんとも中途半端な毎日だ。
そんな彼女の天敵は、幼馴染のルーク・ヴェルトナー。社交界では「銀の夜光蝶」と呼ばれる色男で、顔を合わせるたび嫌味をぶつけてくる困った男。しかも、なぜかいつも黒い革手袋を外さない。昔はあんなに可愛かったのに、一体どこで拗らせてしまったのか。
そんなある日、世話好きな伯母から突然の縁談。相手はまさかのルーク。断固拒否するセラフィナだったが、間の悪いことに、今度は騎士団からルークが遺跡調査の同行者として派遣されてくる。
「私、誰とも! 一生結婚しませんから!」
叫んだところで、もう後には引けない。婚約の話をうやむやにしたまま、二十日間、二人きりの調査の旅が始まってしまう。
行き先は、ゴート地方の森深くに眠るという「妖精の祠」。そこで二人を待つのは、いったい何なのか——。
幼馴染から始まる、じれったくも甘い運命の旅、開幕。