あらすじ
婚約者の会社で十年間、資金繰りと経理を支えてきた真壁奈緒。だが融資更新の前夜、粉飾決算の責任を押しつけられ、婚約破棄と同時に解雇される。十年間、彼の「大丈夫、俺を信じて」という言葉だけを根拠に数字を調整し続けてきたことに気づいた奈緒は、証拠を保全して会社を去った。そんな彼女の帳簿に残る"一円の差額"に目を留めたのは、従業員の解雇もためらわない冷徹な再建責任者・黒瀬怜司。「君を助けたいわけじゃない。この数字だけが、都合の悪い事実を消していない」――敵として現れた彼と共に、奈緒は一ノ瀬グループが取得を検討する海辺のホテルの再建に挑む。粉飾の真相、揺れる現場の声、そして自分自身の"言葉を信じられない"という傷。数字で人を切ろうとする黒瀬と、検証できないものを信じられない奈緒――ぶつかり合いながらも互いの弱さを補い合う二人は、会社の未来と、奪われた自分の名前を、同時に取り戻せるのか。