あらすじ
わたくし、ミラベル。王族の悪夢を食べる聖獣・獏(ばく)の親子のお世話係――「夢守(ゆめもり)」でございます。
……でしたの。「昼間から獏と寝ているだけの陰気な女」と嗤われ、婚約破棄のうえ、お役目ごと廃止されましたのよ。
けれど、ご存じかしら。獏は満腹では悪夢を食べませんの。毛を梳き、庭を歩かせ、ちょうどよくお腹を空かせておく――あの昼寝に見えた時間こそが、王宮の夜を守っておりましたのよ。
そしてもうひとつ。獏に食べられた悪夢は、消えてなどおりませんの。――お預かりしていただけですわ。
獏の去った王宮で、殿下は十年ぶりの悪夢に襲われますの。眠り薬に頼れば昼が霞み、しまいには山から野生の獏を捕まえてくる始末。夢守のいない獏は加減を知りませんのよ。悪夢も、良い夢も、志の夢まで――。
わたくしは丘の家で、寝台職人の伯爵さまと眠りの相談を続けておりましたけれど、それを聞いては黙っておられませんわ。獏を、迎えに参ります。
復讐はいたしません。けれど今回は、待ってもおりませんの。もふもふの獏親子と、世界一やさしい眠りの物語。