あらすじ
剣はほどほど。魔法もほどほど。
好きなのは昼寝と読書。
辺境貴族の嫡男アルノルト・レーヴェルト、十五歳。
「努力しないで勇者になります」
そう宣言して実家を追い出された彼が旅先で出会ったのは、国ひとつ滅ぼしかねない古き竜リュシエルだった。
普通なら剣を抜くところを、アルが口にしたのは――
「わあ、きれい」
たったそれだけ。
気づけば竜は仲間になり、真面目な護衛ライネルは胃を痛め、妹セリアは兄の奇行を記録し始める。
痩せた土地では、無理に畑を耕さず牧場を作る。
盗賊は倒さず、仕事と役割を与えて自警団にする。
枯れた井戸には水を戻し、洪水の村では川との付き合い方を変える。
廃れた大迷宮は、攻略するのではなく市場・倉庫・訓練場・避難所として使い直す。
そしてアルが次に目をつけたのは――
「勇者が頑張らなければ回らない世界」そのものだった。
何でもできるから、何でも任される。
頼まれれば断れない。
その結果、一人の勇者ユノが壊れる寸前まで働かされていた。
ならば勇者をもっと強くするのではなく、
勇者がいなくても回る仕組みを作ればいい。
道を通し、仕事を分け、帳簿を整え、人を育て、物流をつなぐ。
アルが昼寝するために考えた仕組みは、やがて村を、街を、迷宮を変え――ついには王都と魔王までもが無視できないものになっていく。
「努力が嫌なら、努力しなくても回るようにすればいいんですよ」
戦って世界を救うのではない。
誰か一人の善意や根性に頼らなくても、人がちゃんと食べて、働いて、休める世界を作る。
努力は最小限。仕組みは徹底的に。
昼寝好きの勇者志望が、本人の望まぬまま世界の仕組みを作り替えていく――
制度改革系・異世界冒険コメディ。