あらすじ
乳白の真珠が百八粒。金糸で縫われた薔薇が裾に十二輪。細い腰を飾る薄桃色のリボンが三本。王都じゅうの祝福を集めて仕立てたようなアデル様の晴れ着を、私は踵で踏み、両手で裾をつかみ、力いっぱい引いた。
フィリップ様の隣で笑うアデル様が。私には一度も向けられなかった顔で、彼が彼女の真珠を褒めるのが。だから裂いた。誰かに嵌められたのでも、足を滑らせたのでもない。
真珠が床を跳ねた。百八粒あったはずだが、転がる最中のものまでは数えられない。私にも限界はある。
フィリップ様は私の名を呼んだ。あの夜、私に向けて名を使ったのは最初の一度だけだった。