あらすじ
「君のようなパン焼きしか能のない令嬢は、公爵家の妻に相応しくない」
煌びやかな夜会で、婚約者から一方的に婚約破棄を告げられたフィーネ・レーヴェンハルト。『パン焼き令嬢』と嘲笑われ、社交界を追われた彼女は、しかし少しも取り乱さなかった。
前世は現代日本のパン職人。過労で命を落とした彼女にとって、好きなパンを焼いて生きられるなら、それこそが何よりの幸せだったから。
「退職金代わりに、実家の窯を一つ、いただけませんこと?」
泣きも喚きもせず去っていくフィーネ。だが誰も気づいていなかった——彼女が毎朝焼き続けていたパンが、この王国そのものを支えていたことを。
辺境の古い一軒家に追いやられたフィーネが見つけたのは、何百年も眠り続けた大きな石窯。磨き上げ、火を入れ、夜明けとともにパンを焼くと、煤にまみれた窯の奥から、もふもふの小さな精霊がころんと転がり出てきて——?
「これからよろしくね、カマド。私、毎朝ここでパンを焼くから」
寂しがり屋の窯神様と、ひたむきなパン職人令嬢が織りなす、心温まる辺境スローライフ。焼きたての香りが運ぶ、じんわり幸せな『祝福のパン屋』の物語、開店です。
失ってから気づく者たちを尻目に——さあ、明日はどんなパンを焼きましょうか。