あらすじ
日本で遺品整理士として働いていた高瀬仁、三十八歳。
死後に転生した剣と魔法の世界で授かったのは、死者の遺物に残る記憶をわずかに見る《追憶》だけだった。
戦えない仁が配属されたのは、王都地下の「王立勇者遺物管理局」。歴代勇者や聖女が残した、剣、杖、食器、手紙、用途不明の道具を整理する地味な役所だ。
だが、三百年前の勇者レオの聖剣には奇妙な傷があった。刃はほとんど使われていないのに、柄だけが、何年も誰かを待ったように擦り減っている。
仁が《追憶》で見たのは、魔王を倒した英雄ではない。
「母さん。帰りたい」
そう泣く、日本人の少年だった。
さらに聖剣の鞘から見つかった黒い板には、日本語で表示される。
《異世界転生者 管理番号0487》
《帰還申請――却下》
勇者が四百八十七番なら、その前にも大勢いた。
彼らは誰に、何のために、この世界へ送られたのか。
物の傷から暮らしを読み、記録と記憶の食い違いを追ううち、仁は千年続く異世界転生の仕組みへ近づいていく。
そして、俺自身の番号は――