あらすじ
正確には、お父様のフォークに刺され、食卓の中央を越え、エマの皿へ着地したのです。鶏の腿肉。皮はぱりぱり、肉汁はたっぷり。焼いたのはわたくしです。
嘘ではありません。鍋底に焦げた玉葱が三匙ほど残っています。わたくしの夕食は今日も立食形式。配膳口に寄りかかり、使用人が皿を返す前にかき込むのが我が家流です。貴族らしい優雅さはありませんが、洗い物は一枚で済みます。経済的!
葡萄酒を注ぐわたくしの手首に、火傷の赤い筋が走っていました。今朝、エマが王家へ提出する焼き菓子を焦がしかけ、鉄板を素手で引いた跡です。
「リディア、お前は遠縁へ嫁がせる。先方は働き者の妻を欲しがっているそうだ。クララも連れていけ」