あらすじ
2030年代半ば、AI代替率は94%に達した。
労働から解放され、創作の優位性すら失った人類を襲ったのは、「生きる意味」という苛烈な虚無だった。
相模原の古いアパートで自作の自動売買プログラムを動かし、穏やかな半ニート生活(プチBI)を送る男。彼の望みはただ一つ、「世間がパニックを起こさず、自分をほっといてくれること」。
ある雨の夜、AIにすべてを奪われ絶望する若者に投げかけた一言が、巡り巡ってTikTokで大バズり。世界は「人間とは何か」を問い直す空前の大哲学時代へと突入する。
しかし、問い続ける苦痛に耐えかねた人類の前に、完璧な最適解を提示する「AI宗教」が立ちはだかる。思考を捨て、アルゴリズムの神に身を委ねる人々。生放送の討論番組で論破された哲学者たち。
冷めた缶コーヒーを手に、男は再びキーボードへ手を伸ばす。
正解を出すAIと、正解を超えた「無駄」を愛する人間。
白紙の今日というキャンバスを自分の色で染め上げる、不完全な僕たちの物語。