あらすじ
三年間、夫の口癖は変わらなかった。
妻なら夫の恋くらい応援しろ。
彼は本気でそう信じている。
記念日の贈り物は、恋人に渡された。
収穫祭の上座は、恋人に譲らされた。
恋人への誕生日の品すら、妻が選ばされた。
夫にとって妻は、何をしても許す人間だ。
恋の世話を任せても、席を奪っても。
感謝の言葉さえ必要のない、便利な存在。
彼女が耐えたのは愚かだからではない。
亡き父との約束があった。
夫への愛が、まだ残っていた。
けれど夫は気づかない。
帳簿を整え、商会と渡り合い、領地を支えてきた妻の手を。
その手がいつか離れることも。
彼女はまだ、笑っている。
朝の紅茶はもう、味がしないのに。