あらすじ
表社会には存在しない「銀行」がある。
そこで扱われるのは、金ではない。 人間の存在そのものだ。
依頼人がこう頼めば―― 「この人間を、半年間だけ社会から消してください」
その人物は痕跡ごと消え、契約期間が満了すれば、元の生活へと静かに帰っていく。 それが、噂に囁かれる「銀行」の、表向きの姿だった。
元刑事の調査員・高城恒一(42)は、失踪者探しを生業としている。 彼には、けっして癒えることのない過去がある。
26年前、警察官時代に担当した16歳の少女・三崎紗季の失踪事件。 懸命な捜索も虚しく、少女は見つからないまま、事件は時効を迎えた。
以来、高城は「戻ってこない人間」を追い続けている。
ある日、高城の事務所に、一人の女性が依頼にやってくる。 突然失踪した兄を探してほしいという。
兄は姿を消す三日前、こう言い残していた。
「半年だけ、俺はいなくなる」
調査を進めるうち、高城は裏社会の情報屋から、奇妙な言葉を聞く。
「その人は死んだんじゃない。預けられただけだ」
その一言をきっかけに、高城は都市伝説として語られる存在―― **「失踪者の銀行」**の実態に触れていく。
証言を集め、記録を辿るうちに、高城は気づいてしまう。 銀行は、ただ人を隠しているだけの組織ではない。
そして、過去の「預金者」の記録の中に―― 26年間探し続けてきた、あの少女の名前を見つける。
失踪とは何か。 人は、どこまで自分の人生を手放せるのか。 そして――見つけ出すことは、いつも救いなのか。
元刑事が辿り着く先に待つのは、 社会の裏に張り巡らされた、もう一つの秩序の正体。
そして、彼自身も知らなかった、自分自身の過去。