あらすじ
お金があるのに自由がないと、自由なのにお金がない。
一年ほど前まで働いていた湊は、仕事を辞め、実家で暮らしながら貯金を切り崩して生活している。
働いていた頃、給料を「生活」「将来」「自由」の三つに分けて貯めていた湊にとって、今はその最後の貯金を使いながら過ごす時間だった。
図書館で本を読み、自転車で知らない街を走る。
誰にも急かされない生活。
けれど、家族から「いつまで休むの?」と聞かれるたび、自分の選んだ自由に自信が持てなくなっていく。
一方、会社員の直人は、真面目に働き、毎月の給料を貯めながら安定した生活を送っていた。
欲しいものを買えるだけのお金もある。
しかし、仕事で責任が増えるにつれ、休日に好きだった読書やサイクリングを楽しむ余裕まで失っていく。
そんな正反対の生活を送る二人が、偶然再会する。
湊は直人に「何もしない時間」を見せ、直人は湊に「働いて得る安心」を見せる。
互いの生き方を羨ましく思いながらも、二人は自分の生活を変えようとはしなかった。
やがて、湊の貯金は少しずつ減り、直人の時間と心の余裕も少しずつ失われていく。
そして、何気ない誰かの一言をきっかけに、二人は初めて自分自身の生き方を見つめ直す。
自由とは、仕事をしないことなのか。
安定とは、お金を持っていることなのか。
立ち止まった湊と、走り続けてきた直人。
二人が探し始めるのは、どちらかを選ぶことではなく、自分にとっての「ちょうどいい生き方」だった。
そして最後に湊が自転車の鍵を握ったとき、ペダルを踏む理由は、これまでとは少し違うものになっていた。