あらすじ
「数値も出せぬ無能薬師との婚約は破棄する!」
煌めく大広間で、公爵令息オルドは高らかに宣言した。彼が選んだのは、義妹にして「聖薬師」を名乗るミレーヌ。数値の出る調合薬こそが正義とされるこの世界で、土と向き合う伝統薬学を継ぐ伯爵令嬢リゼットは「無能」と蔑まれてきた。
だが、リゼットは泣きも喚きもしない。前世は日本の薬学研究者――理不尽を前にすれば、まず「観察」してしまうのが彼女の性分だった。
「喚いたところで、非科学的ですもの」
静かに婚約破棄を受け入れたリゼットが求めたのは、ただひとつ。誰もが「無価値な雑草地」と嘲笑う、ご先祖様の薬草園だけ。
「あんな数字も出ぬ雑草地、勝手に持っていけ」
その言葉、後悔なさらないといいのですけれど――。
鑑定スキルに一切反応しない特殊な薬草群。それは五代前の始祖・曾祖母レナが遺した、まだ誰も知らぬ「本物の価値」。そして老侍女が守り続けた古い手記には、リゼットにだけ読める文字が綴られていた。
そう、曾祖母もまた――転生者だったのだ。
数字に踊らされた者たちが見落とした、土の中に眠る真実。その毒草、私が育てたものですけれど?
無能と蔑まれた令嬢が、受け継いだ知識と誇りを胸に、静かに、そして痛快に運命を覆していく。数値にならない価値を巡る、転生令嬢の再生譚――物語は、ここから始まる。