あらすじ
「僕が異能を持って生まれてきたのは、いけないことだったの?」
名を奪われた悲劇の巨神と、居場所を失くした少年――二つの魂を救ったのは、異能を持たない一人の男の土下座だった。
『神格鑑定局』のベテラン局員・高村宏一は、かつて命を救うため神と契りを交わし、妻子と引き裂かれた元同僚・祝部(ほうり)要の息子である新(あらた)と、偶然、雨のバス停で偶然出会う。
ずぶ濡れの新に一本の傘を譲る高村。
だが、幼い新の心は折れる寸前だった。
父の血である「異能」を忌み嫌う母との生活に耐えかねた新は、逃げるように岩手の祖母の家へと向かう。
そこで新が見つけたのは、千年前、朝廷に欺かれ「悪路王」の蔑称とともに封印された心優しき巨神・阿玄王(大多羅法師)が眠る『玄の箱』だった。
導かれるように封印を解き、箱の底に広がる「失われた神の夢」に取り込まれてしまった新。
神格の暴走による大災害の危機が迫る中、箱の底で阿玄のあまりに悲痛な過去を見届けた新は、新たな神使として立ち上がる。
そして外の世界では、異能を持たない常人・高村が、傷ついた巨神と引き裂かれた家族を救うため、渾身の土下座で運命に立ち向かう――。
『隠国の巫女』へと繋がる、采女新の原点を描く鎮魂と再生の物語。