あらすじ
「私、彼が傲慢で、誰とも話したくない人間だと思っていた。
だから、何度も彼をからかった。
でも――彼が沈黙の裏に隠していた秘密を知った瞬間、私は彼の声を聞くためなら、何だってしたいと思うようになった。」
2025年、春。
東京のとある高校に、謎めいた転校生・黒木空がやって来る。
穏やかな表情。
誰とも目を合わせようとせず、挨拶すらしない。
ましてや、一言も話そうとしない。
その態度から、クラスメイトたちは彼を「無口で傲慢な男」だと思い込んでいた。
中でも、クラスの「お姫様」と呼ばれるほど気品があり、厳格な性格で知られる少女――柊玲奈は、そんな空の態度がどうしても気に入らなかった。
「そんなに偉そうにして、何様なの?」
そう思った玲奈は、彼がいつか口を開くまで、何度も空をからかうようになる。
そしてある日、大勢のクラスメイトが見ている前で、彼に飲み物をかけてしまう。
それでも空は怒鳴らなかった。
怒りもしなかった。
ただ玲奈を見つめる。
その瞳に浮かんでいたのは、怒りではなく――どこか寂しげな悲しみだった。
その静かな眼差しは、玲奈の傲慢さを一瞬で打ち砕いた。
そしてある日。
偶然、空の後を追うことになった玲奈は、彼が誰にも知られたくなかった「ある秘密」を目にしてしまう。
その瞬間、玲奈が信じていたものはすべて崩れ落ちた。
「……私、何をしてたの?」
傲慢だと思っていた少年。
嫌って、からかって、傷つけてしまった少年。
その沈黙には、玲奈が想像していたものとは比べものにならないほど深い理由が隠されていた。
罪悪感に苛まれる玲奈。
そして彼女は決意する。
自分が彼を傷つけた分だけ、今度は彼のそばにいる。
たとえ、彼の閉ざされた世界に入ることを拒まれても。
たとえ、どれだけ時間がかかっても。
――いつか必ず、彼の本当の声を聞く。
これは、一人の少女が「最悪の出会い」をした少年の心に触れていく、十日間――ではなく、十章にわたる青春ラブストーリー。