あらすじ
高校二年生の斉藤栞奈は、父親と二人で暮らしている。
海外で働く母親は、年に数回しか帰国しない。
幼い頃から母親のいない生活を送ってきた栞奈は、寂しさを胸の奥に隠しながら、いつも通りの日々を過ごしていた。
そんな夏の日、父親に地方の支社への転勤辞令が下り、一家は古い町へ引っ越すことになる。
会社が用意した古民家に足を踏み入れた瞬間、栞奈は奇妙な懐かしさを覚えた。
その町では、古くから「御影様」という存在が信仰されていた。
御影様に選ばれるのは、わずか三歳までの子供。
選ばれた子供には、桜の花のような痣が現れ、儀式によって神社へ「返される」。
返された子供の身体は朽ち果て、魂だけが神社に囚われる。そして御影様は、必ず何かを犠牲にする――。
引っ越して二週間。母親との電話で町の名前を告げた瞬間、母親は言葉を失った。
「……どうして、そこにいるの?」
母親もまた、幼い頃に御影様へ選ばれた子供だった。
儀式の前夜、曾祖母に救い出され、児童養護施設へ預けられた。
そして曾祖母は、母親の代わりに御影様の犠牲となった。
栞奈が生まれたとき、母親は娘の手首に自分と同じ桜の痣を見つけ、すべての記憶を取り戻した。
娘を御影様から隠すため、あえて離れて暮らしていたのだ。
やがて栞奈の手首に消えていた痣が再び現れ、町の神社から声が聞こえ始める。
一方、御影様を強く信仰し、逃げた娘を恨み続けていた祖母にも、亡くなった曾祖母の声が届き始める。
三世代の女性たちが背負ってきた秘密。
母親は栞奈を救うため、決して戻れないはずの町へ向かう。
そして栞奈は最後に、自分自身へ問いかけられる。
――御影様のもとへ還るのか。
それとも、自分の人生を自分で選ぶのか。