あらすじ
会社員として一人暮らしをする灯里のもとに、ある夜、祖母から電話がかかってきた。
いつものような他愛のない会話。
けれど、「今年のお盆は帰ってくる?」と尋ねられた瞬間、灯里の胸に小さな痛みが走る。
──その夜だった。
どこからともなく、水の音が聞こえてきた。
ぽつ、ぽつ、ぽつ。
蛇口を確認しても、水は一滴も落ちていない。
それを境に、灯里の日常に奇妙な「音」が増えていく。
晴れた日の電車に打ちつける雨音。
誰もいない場所から聞こえる笑い声。
夜の部屋に響く、ラジオのような砂嵐。
そして、その音を聞くたびに、灯里の中から忘れていた記憶が浮かび上がってくる。
忘れていたのは、何だったのか。
そして、なぜ灯里は、それほどまでに思い出すことを恐れているのか。
『雨音』が、少しずつ記憶の底へと灯里を誘っていく。