あらすじ
キャラクター
楠木渡羽(くすのき・とわ)
本作の主人公。20歳。18歳までアメリカで暮らしていた日本人で、英語と日本語を話すバイリンガル。外では英語、家の中では日本語で過ごしていた。しかし、日本社会特有の「空気を読む」「察する」「いい感じにやる」といった曖昧なコミュニケーションが苦手。
根暗というわけではなく、むしろ一人でツッコミを入れながら状況を整理するタイプ。明るく、人と話すこと自体は嫌いではない。
異世界召喚後は「日本人だから」という理由だけで王宮から追放される。
しかし、渡羽は日本人であると同時に英語のネイティブでもあった。
この世界の人間には読めない「英語で書かれた建国神話」を読むことができる唯一の人物となる。
本人は特別な使命を背負うつもりはなく、
「日本に帰っても、またあの会社に戻るだけだし……もう、こっちで暮らすか」
という比較的ゆるい気持ちで異世界生活を始める。
フェルディナンド第二王子
16歳。王族でありながら身分を隠して街へ出ることがあり、渡羽とは本屋で出会う。
日本語を学問として研究しており、読み書き・会話のすべてを習得している優秀な学生。
ただし、あくまで「学問としての日本語」であるため、ネイティブである渡羽の使う日本語にたびたび困惑する。
渡羽とは「日本語を知っている者」と「日本語を使って生きてきた者」の違いを利用した掛け合いが中心となる。
当初、渡羽には王子であることを隠している。
アルベルト第一王子
(18~20歳想定)王太子の座を巡って第二王子を意識している。
建国神話を解読することで、自らの王太子としての地位を確固たるものにしようと考え、異世界人を召喚する。しかし召喚されたのは日本人。
「日本人には建国神話が読めない」という過去の経験から、渡羽を役立たずと判断して王宮から追放する。
ところが後になって、渡羽が建国神話を読んでいることを知る。
自ら切り捨てた存在によって、自分の計画を狂わされていく人物でもある。
舞台設定
この世界では、過去にも何度も日本人が召喚されている。召喚された日本人たちは、それぞれ異なる知識や文化をこの世界へ持ち込んできた。
そのため街には、ラーメン、日本料理、着物、箸、小説、漫画、レシピ、日本文化に関する資料など、日本人が残したものが数多く存在する。
しかし、日本人たちはこの世界の言語を話すことはできても、読み書きを積極的に学ばなかった。その結果、「日本人は現地語を話せるが、読めない」という奇妙な文化が定着している。
日本語
過去の日本人が残した資料を読むため、日本語はこの世界でも研究対象となっている。日本語を読むこと自体が非常に難しく、日本語を専門的に学ぶ人間は優秀な学者やエリートが中心。学園の日本語専攻も、優秀な学生が集まる人気の専門分野となっている。しかし、彼らが学んでいるのは、あくまで「外国語としての日本語」。そのため、文法的には正しくても、日本人が実際の会話で使う表現とはズレることがある。そこで登場するのが、渡羽。「正しい日本語」を学んできた生徒たちに、「日本人が実際に使う日本語」を教えていく。本作では、この言語感覚のズレをコメディとして描いていく。
建国神話
この世界の建国にまつわる古文書。王国の歴史を知るうえで極めて重要な資料だが、誰にも読むことができない。そのため、解読できた人には「永遠の名誉」を得る。過去にも、日本人に解読の依頼をした。しかし、日本人たちは誰一人として読むことができなかった。その文字の正体は――英語。
アメリカ育ちで英語を読み書きできる渡羽だけが、その内容を理解することができる。
建国神話を読み進めるにつれ、王国の歴史だけでなく、過去の日本人召喚や遺跡の存在にも繋がる謎が浮かび上がっていく。
作品の構造
本作は、「異世界で日本語教師として暮らす日常」と、「建国神話と遺跡を巡る王国の謎」の二つを軸に展開する。
日本語の授業や生徒たちとの掛け合い、第二王子との交流などのコメディを楽しみながら、物語が進むにつれて、
「なぜ日本人はこの世界に何度も召喚されているのか?」
「過去の日本人は、この世界に何を残したのか?」
「なぜ建国神話は英語で書かれているのか?」
という大きな謎へと繋がっていく。
異世界で「役立たず」とされた主人公が、自分では当たり前だと思っていた知識を武器に、少しずつこの世界での居場所を見つけていく物語である。