あらすじ
団地の一室で始まった事件は、静かに淡々と現実の温度で進んでいく。
科捜研は来ない。崖もない。涙も叫びもない。
あるのは、腰痛持ちの鑑識の無言の作業と、紙詰まりを知らせるプリンターの電子音だけ。
新米刑事・田所は、刑事ドラマの中で信じてきた“劇的な捜査”が現実には存在しないことを知る。
犯人は自首し、取り調べは階段の踊り場で行われ、事件の核心は淡々とした供述調書の文言に収まっていく。
それでも、彼らは確かに刑事だった。
地味で静かで、しかし揺るぎないプロフェッショナル。
曇り空の下、田所は“走らない刑事”の背中を見送る。
現実の捜査の静けさを描いた、ささやかな成長の物語。