あらすじ
ダンジョンが日常の一部となった現代日本。
佐倉蓮、二十四歳。
特別な才能はない。
強力なスキルもない。
生活費の足しにダンジョンへ潜る、ただのFランク探索者だ。
そんな彼がある日、床の崩落に巻き込まれ――本来なら足を踏み入れるはずのない地下十九階へ落下する。
目の前に現れたのは、自分より遥かに格上の魔物。
武器は折れた。
回復薬も尽きた。
救援も来ない。
そして探索者端末に表示されたのは、
《HP:1 / 100》
逃げても死ぬ。
戦っても死ぬ。
どう考えても、詰みだった。
それでも蓮は立ち上がる。
英雄だからではない。
隠された力があるからでもない。
ただ――死にたくなかった。
泥臭く足掻き、瓦礫も、ロープも、折れた短剣も、使えるものすべてを使って生きようとする。
そしてついに、死亡までのカウントがゼロになった瞬間。
世界から一つの通知が届く。
《特殊条件を確認》
《称号【死を拒む者】を獲得しました》
《死亡判定――拒否》
傷は治らない。
突然最強になったわけでもない。
HPも、たったの1。
ただ一つ違うのは――
死ぬはずだった凡人が、まだ生きていること。
そして彼の前に、存在するはずのない扉が現れる。
《未確認領域を検出しました》
《推奨レベル――測定不能》
強者なら、敵を倒す。
天才なら、正解を見つける。
だが、佐倉蓮にはそのどちらもない。
だから考える。
逃げる。
騙す。
隠れる。
利用する。
這ってでも前へ進む。
勝てなくてもいい。
格好悪くてもいい。
最後に生きていれば、それでいい。
これは最強の探索者の物語ではない。
何度絶望しても、何度地面に叩きつけられても、
「まだ死んでいない」
その一点だけを理由に立ち上がり続ける――
一人の凡人の、現代ダンジョン生存譚。