あらすじ
一ノ瀬陽先輩は、この大学でいちばん有名な人だ。
誰にでも優しくて、誰とでも距離が近い。だから月に何人も告白されて、そのたびに断っている。それなのに、断られた子がひとりも彼を嫌いにならない。そういう断り方をする人。
羽賀なずなは、その現場にたまたま居合わせてしまった。中庭のベンチで、泣いている女の子と、困った顔で笑っている先輩。
——今のは、六十点です。
言うつもりなんてなかった。口が勝手に動いていた。
翌日、先輩は学食までなずなを探しに来た。
「羽賀さん。俺の断り方に、点数をつけてくれないか」
報酬はBランチ一食。契約はそれだけ。
なずなは、生まれてからずっと採点される側だった。姉と比べられて、いつも八十点だと言われて育った。八十点は、褒め言葉ではない。一番にはならない、という意味だ。
そんな自分が、はじめて採点する側に立たされている。
先輩の断り方は、確かに上手い。上手すぎて、こわい。この人はどうして、傷つけない断り方をこんなに知っているんだろう。
そして、なぜだろう。回を重ねるほどに、この人はわたしに対してだけ、言葉を選び損ねるようになっていく。
「……いま、何点」
「採点、できません」
上手に振られたことのある人と、上手に振られたことしかない人の、キャンパス・ラブストーリー。