あらすじ
神様のところには、ときどき人間の「落とし物」が届く。
それは財布でも、鍵でもない。
《告白する勇気》
《母親の声》
《十年前の約束》
《故郷の匂い》
《誰かを好きだった気持ち》
人が忘れたり、失ったりした大切なものが、ときどき形を持って天界へ落ちてくるのだ。
少年ルカの仕事は、それを持ち主へ返すこと。
妻との最初の思い出を失くした老人。
父を許せなかった記憶を忘れた女性。
さまざまな「落とし物」を届けながら、ルカは少しずつ知っていく。
思い出すことは、必ずしも幸せなことではない。
けれど、忘れることが救いとも限らない。
そんなある日、ルカは気づく。
――自分には、昔の記憶が一つもない。
なぜ自分はここにいるのか。
誰に育てられたのか。
誰かに愛されたことはあったのか。
そして保管所の最奥で見つけた、名前の消された白い箱。
そこに書かれていたのは、
《母さんとの最後の一日》
だった。
これは、忘れてしまったものを取り戻す物語。
そして――
忘れてしまっても、決してなくならないものの物語。