あらすじ
『毒を喰む空』あらすじ
「私はただ、あの美しい人を救いたかっただけなのに——」
東京・吉祥寺の静かな地下画廊。
自分に自信が持てず、周囲の顔色ばかりを窺って生きてきた編集プロダクション勤務の今井 莉子(いまい りこ)は、雨の日に現れた一人の青年に心を奪われる。
小坂 馨(こさか かおる)——。
透き通るような肌と彫刻のごとき美貌を持ち、過去の深い孤独とトラウマを抱えた傷だらけの文筆家。
彼の紡ぐ言葉、儚げな微笑み、そして圧倒的な「美」に魅了された莉子は、次第に彼を「私が守らなければならない」という使命感に囚われていく。
しかし、馨の見せるあまりにも過剰な自責、絶望の陰に見え隠れする不気味な違和感。
「君しかいない」「僕の生きている価値なんて……」——優しさと弱さを巧みに織り交ぜた言葉に追いつめられ、莉子は自らの意志で、一度踏み込めば戻れないコンプライアンスの禁忌へと手を伸ばしてしまう。
それは運命の救済か、それとも破滅への手招きか。
美しい言葉と完璧な弱さで人を支配する男と、その「毒」を自ら喰らい、救いと錯覚しながら堕ちていく女。
静かに浸食されていく二人を待ち受ける、狂おしくも切ないサイコ・サスペンス。