あらすじ
あらすじ
『ゾンビ人間 ―観測者の記録―』
人の“魂”が見える少女・ユイは、幼い頃から他人の内側に灯る光を視認できる特異な能力を持っていた。その光は人それぞれに揺らぎ、温度や色合いを持ち、感情や意志と密接に結びついている――彼女はそう理解していた。
しかしある日、彼女は“何も見えない人間”の存在に気づく。
肉体は動き、言葉を交わし、笑い、怒り、涙さえ流す。だがその内側には、あるはずの光――魂が、存在しない。
ユイは彼らを密かに「ゾンビ人間」と呼び、観察を始める。
彼らは社会の中に自然に溶け込み、周囲と見分けがつかない。むしろ理性的で、効率的で、時に“普通の人間よりも優れている”ようにすら見える。
だが観測を続けるうちに、ユイは違和感を覚える。
ゾンビ人間は“感情を模倣している”のか、それとも本当に感じているのか。
魂の有無とは何なのか。
そして、自分が見ている「魂」とは、果たして絶対的な真実なのか――。
記録を重ねるほどに、ユイの中で「人間とは何か」という定義が揺らいでいく。
やがて彼女は、一人のゾンビ人間と深く関わることになり、決定的な選択を迫られる。
それは、“魂があること”が人間である証なのか、
それとも“他者を思う行為”こそが人間なのか――という問いだった。
観測者であるはずの少女は、いつしか観測対象に引き込まれ、
世界の境界線そのものを疑い始める。
これは、
「魂が見える少女」と「魂のない人間」が交差するとき、
“人間の本質”が静かに暴かれていく記録である。