あらすじ
寄合の真ん中で「水を薄めて売ったのは、この娘です」と義姉に名指しされました——濡れ衣でございます。卓に置かれた豆腐の角は、朝の水で締めたものではありません。わたくしは一月前から、朝場へ入れてもらえていないのです。
言い返しません。誰が薄めたのかも申しません。ただ、型枠を伏せてお見せするだけ。朝の冷たい水は底へまっすぐ筋を残し、陽を吸った晩の水は端で折れるのです。
確かめずに名を挙げた家は、町の朝の請けを外されました。空いた台に誰も立てぬまま半年が過ぎ、崩れた角を買い続けた客が、やがてわたくしの名で朝を注文しはじめます。「また朝を請けてくれ」と門前へ立った義姉へ、同じ一句を静かにお返しするお話。