あらすじ

字が読めないことを隠して、わたしは城壁の落書きを消す下働きをしている。没落した子爵家の娘だと、知られないように。ある朝、消しても消しても翌日にはまた戻る「落書き」——人の名前の羅列を、若い監察官、辺境伯家のクレイスさまに「一字残らず消せ」と命じられて。 けれど、その名前を夜ごと書き直していたのは、墓を持てない戦友たちを弔う、たったひとりの生き残りだった。そして列にぽつりと空いた一席は——わたしの父の、席で。消せと言われた落書きを、わたしは石に彫りはじめる。消しても消えない字は、壁ではなく心に書いてある。血のにじむ指が刻んだものが、辺境伯家が“なかったこと”にした真実を照らすとき、あの日わたしを笑った者たちの顔が、変わる。泣けて、あたたかくて、最後に少しだけ甘い、読み切りです。

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小説を読もう2026/08/07
  • 現在の作品城壁の落書きは、何度消しても増えるのです 〜消す仕事に落とされた没落令嬢のわたしが、辺境伯家が“なかったこと”にした名前を彫っていたら、辺境伯子息に求婚されました〜