あらすじ
一九八四年、デトロイト。地元の人気ライブハウスのステージで、ギタリストのローナンは愛用のギブソンを掻きむしっていた。スターとしての名声を得る裏で、彼は孤独と限界への恐怖から、周囲を傷つける「仮面」を被り続けていた。そんな彼の度重なる身勝手さに、三年間連れ添った日本人の音楽ジャーナリスト・ユイは、静かに日本行きの航空券を差し出す。プロの確かな審美眼でローナンの「本物の音」を愛し、彼のすべてを包み込もうとしていたユイだったが、その心はもう二度と揺らがないほどに決まっていた。「私、本当に日本に帰るわね」ライブ終わりの楽屋に響く、冷え切った別れの言葉。泣きながら去っていくユイの姿を見た瞬間、バンドの相棒であるクレイグの怒りは限界に達する。楽屋に殴り込み、ローナンの傲慢な仮面を叩き割るクレイグの鉄拳。そして深夜、激しい雨が叩きつける一人きりのアパートに残されていたのは、ユイがそっと隠し録りしていた一本の古いカセットテープ『Ronan's Hard Blues』だった。スピーカーから流れる、かつての自分の生々しいギターの旋律。そして、そこに重ねられたユイの愛に満ちた生の呟きを耳にした瞬間、ローナンの歪んだプライドは粉々に砕け散る。出発は、午前六時。己の弱さをすべて受け入れた男が、明日なんてないかのように愛にしがみつくため、プライドも何もかもをかなぐり捨てて豪雨のハイウェイを爆走する。実在のギタリスト、ゲイリー・ムーアの名曲『Hold On To Love』の世界観をモチーフに、剥き出しの孤独とカタルシスを描く、熱く切ないロックンロール・ドラマ。――お前は嘘の後ろに隠れようとし、自滅していく。なら、今すぐその愛にしがみつくんだ、明日なんてないかのように!(※全三話。金・土・日の三日間連続で18:00に更新し完結します)